離婚する際に大きな問題の一つとなるのが財産分与の問題です。
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げてきた財産を公平に分配することです。
基本的には、夫婦の財産を半分(2分の1)ずつ分けます。
一見簡単なようにも思えますが、財産分与は離婚の際に最も揉める事柄の一つとなっています。
たとえば、次の①~④によって、財産分与の金額等は大きく違ってくからです。
①「夫婦の財産」には何が含まれるか。
いつの時点の財産を分けるのですか?
親から相続した財産は?
子ども名義の預貯金は?
借金も2分の1ずつ負担するのですか?
夫が会社を経営しているのですが、会社の財産をもらえるのですか?
②証拠を集めることができたか。
相手が管理している財産をどのようにして調べるのですか?
誰からどのような証拠を入手すれば裁判所に認めてもらえるのですか?
③財産がいくらなのか。
不動産の価格はどうやって決めるのですか?
株価はどうやって決めるのですか?
親が頭金を出しているので親に頭金を全額返したいんですけど?
住宅ローンは金額に反映されないのですか?
④財産をどのように分けるのか。
どんなときでも2分の1ずつで分けなければいけないのですか?
夫名義の住宅に子どもたちと住み続けたいんですけど?
株はよくわからないのでいらないのですが?
妻が別居した後も私名義の預貯金やクレジットカードを使いまくっているのですが?
離婚協議書にどのように書けばいいのかわからないのですが?
・・などなど。皆様の疑問は盛りだくさんです。
というわけで、財産分与は弁護士の腕の見せ所なのですが、
財産分与には、夫婦の共同財産を清算する要素(清算的財産分与)、離婚後の生活費の一時的な援助の要素(扶養的財産分与)の他、慰謝料の意味合いを含むもの(慰謝料的財産分与)があります。
清算的財産分与は、財産分与の中核となるもので、夫婦が婚姻中に共同で築き上げた財産を清算するというものです。
具体的にどのような財産を分けるかということですが、夫婦が婚姻中に購入した家、車、有価証券(株など)、高価な動産(宝飾品、美術品など)、家財道具や、預貯金、保険金などが代表的なものとしてあげられます。
また、場合によっては将来受け取る予定の退職金や年金なども、財産分与の対象となります。
なお、財産の名義がどうなっているかは関係ないので、例えば購入した家の名義が夫のみの名義になっていても、夫婦が共同で築き上げた財産であれば、共有財産として財産分与の対象となります。
また、タンス預金やへそくりなどどちらか一方が管理しているようなものであっても、同様に、夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。
さらに、妻が専業主婦であり、主に夫の収入で家を購入したとしても、一般的には妻が主婦として家事労働をしてその協力や貢献により得ることができたという場合が多いと思いますので、その場合はその家も財産分与の対象となります。
一方、個人の所有となり、財産分与の対象とならない財産もあります。これを特有財産といいます。
特有財産の例としては、結婚前から所有していた財産(独身時代の預貯金、不動産、嫁入り道具など)や、結婚後に取得したものであっても相手方の協力によらないで取得した財産(相続で得た遺産、親などから個人的に贈与を受けた物など)などがあげられます。
このように、夫婦の共同の財産を分けるといっても、そもそもどの財産が分与の対象になるのかという判断が難しい場合もあり、このことが離婚の際に夫婦間でもめる原因の一つとなっています。
また、清算的財産分与では、基本的には夫婦平等に2分の1ずつ分けることになります。
妻が専業主婦で、夫の給料で主に生活している場合であっても、妻が家事労働をすることで財産形成に貢献したと考えられますので、基本的には2分の1の財産分与が認められる傾向にあります。
しかしながら、その財産を取得したことについての夫又は妻の貢献度によっては、2分の1ずつではなく分与する割合が変わる場合があります。
例えば、夫が医師で高収入があり、妻が専業主婦であるような場合で、夫婦の共同財産の形成が主に夫の医師としての手腕力量によるような場合は、妻の家事労働などを評価しても妻には2分の1の財産分与は認められないこともあります。
過去の裁判例でもこのような場合は妻に20%程度の財産分与しか認めなかった例もあります。
このように清算的財産分与では、基本的には2分の1の分与を基本としつつ、妻(または夫)がどれだけ財産形成に貢献したかによって分与の割合が判断されるということになります。